コラム column






市民を照らす光~南相馬市立中央図書館~

2014年9月、私たち高橋恭子ゼミ4期生は福島県南相馬市立太田小学校を訪れた。「南相馬市のいいところを伝えたい」というテーマで小学6年生とムービーを撮ることになった私たちは、班ごとに分かれ、各々取材をすることとなった。

私の班では、南相馬市立中央図書館を取材することになったのだが、最初は図書館と聞いてもピンとこないというのが正直なところであった。相馬野馬追などの伝統ある行事を取材した班もある中、図書館ってそんなに紹介したくなるような施設なのだろうか…?とふと疑問が浮かぶ。しかしその疑問は図書館についた瞬間打ち消されたのである。班員と小学生たちが乗ったタクシーが停車した瞬間、目の前に待っていたのは、私の想像の中の図書館をはるかに越えるものであった。どこまでも横に広がる建物と風の吹き抜ける中庭は、開放的で明るく、本を読む、という図書館本来の目的を忘れそうなほどである.



圧倒的なのは外観だけではない。館内設備も、一般的な図書館以上のものがあった。子供のための読み聞かせの部屋である「おはなしの蔵」では、電気を消すと天井に天の川が浮かびあがる仕掛けがあり、読み聞かせが終わっても物語の中にいるような気分にひたることができる。また、カフェも併設されており、人々の憩いの場となっていた。様々な設備の中でも1番目を引いたのは、屋上にある「天空のテラス」である。長い階段をのぼり、外にでると、眩しいほどの日差しと爽やかな風の吹くテラスに着く。天井には何も遮るものがなく、快晴の空の下で図書館の本を読める場所となっている。



今はこのように明るさと存在感を持つ図書館であるが、震災当初南相馬市は甚大な被害を受け、図書館も臨時休館を強いられることとなった。1年以上の臨時休館期間を経て再び開館した今、図書館はただ本を借りるための場所ではなく、市民にとっての安らぎの場となっているのである。震災という大きな爪痕を残しながらもまたそこから市を、人々を勇気付ける、そんなシンボルとしてこれからもあり続けてほしいと思った。

宇都 有里紗 Arisa Uto
自分自身で経験できること以上のものを知ることのできるメディアとしての映像や演劇の力に興味を持っています。最近は特にドキュメンタリーの一種である観察映画を研究しています。