コラム column

今野畜産~地域復興への想い~
昨年夏、私たち高橋恭子ゼミのゼミ生は福島を訪れた。向かった先は南相馬市立太田小学校。震災の立ち入り禁止区域に隣接する地域である。立ち入り禁止区域 にかなり近いという事前情報から、不安な気持ちもあったが、小学校は普通の小学校となんら変わらなかった。私達は「地元の小学生から見た前向きな福島」というテーマを掲げ、6年生と一緒に動画制作に 取り組んだ。
私の班は、住民に愛されている精肉店、「今野畜産」を取材した。今野畜産は地元では「こんちく」の愛称で親しまれている肉屋だ。福島第一原子力発電所20㎞圏の境界線に位置するお店で、立ち位置禁止バリケードから歩いて10分もかからない。 「こんちく」は店が経営する畜産工場から精肉を直接持ち運ぶので、最高鮮度を保ったままの肉が店頭に並べられる。店のいちおしメニューは肉汁溢れる特大メンチカツだ。「安い」「うまい」「あたたかい」の三拍子揃ったこのメンチカツのおかげで、29日(ニクの日)には行列ができるほどの賑わいを見せるそうだ。そんな「こんちく」が震災後から大事にしてきたことがある。それは、いつもお世話になっている南相馬市の人たちに恩返しをすることだった。今野畜産の女将さんはこう言う。
「まずはできることをやってみよう。不安はいっぱいあるが、食べることで、地域の復興につなげたいと思った」。
2011年4月半ばの緊急避難準備区域に変更になったことを期に震災直後のお店再開の判断を迫られた。南相馬を離れる住民は少なくなかったが、再開の決断に迷いはなかった。地域に支え られてきた店が、住民に再開を願われている時に再開しないわけにはいかない。そんな想いに後押しされた。 6年生の子どもたちは取材前に、目を輝かせながら「うちの近くにあるお店でメンチカツが本当においしくって人がいっぱい並ぶんだよ!本当は今野畜産っていうんだけど、みんなこんちくって呼ぶの。」と動画制作前に教えてくれた。
これは今野畜産が地域に根付いている純然たる証だった。これほど愛されている「こんちく」をどう映像で表現したらいいのか。子どもたちの熱い気持ちに応えられるのか。簡単ではない。 私達の班では子どもの想いを最大限伝えるべく生の姿に近くなるよう心がけ撮影を開始した。おいしそうにメンチカツをほおばるシーンはもちろんのこと、たどたどしくも女将にたくさんの質問していく小学生の姿を記録に残すことができた。その姿をみて、女将の目指す地域復興、すなわち食べることで地域の子供の成長を後押ししていることを実感させられた。 取材を通じて私は地域貢献型の精神と、それを受け取る形で地元民が語る姿に感銘した。今野畜産には今後とも地域に根付くスタイルを貫いてほしいと思う。
昨年夏、私たち高橋恭子ゼミのゼミ生は福島を訪れた。向かった先は南相馬市立太田小学校。震災の立ち入り禁止区域に隣接する地域である。立ち入り禁止区域 にかなり近いという事前情報から、不安な気持ちもあったが、小学校は普通の小学校となんら変わらなかった。私達は「地元の小学生から見た前向きな福島」というテーマを掲げ、6年生と一緒に動画制作に 取り組んだ。
私の班は、住民に愛されている精肉店、「今野畜産」を取材した。今野畜産は地元では「こんちく」の愛称で親しまれている肉屋だ。福島第一原子力発電所20㎞圏の境界線に位置するお店で、立ち位置禁止バリケードから歩いて10分もかからない。 「こんちく」は店が経営する畜産工場から精肉を直接持ち運ぶので、最高鮮度を保ったままの肉が店頭に並べられる。店のいちおしメニューは肉汁溢れる特大メンチカツだ。「安い」「うまい」「あたたかい」の三拍子揃ったこのメンチカツのおかげで、29日(ニクの日)には行列ができるほどの賑わいを見せるそうだ。そんな「こんちく」が震災後から大事にしてきたことがある。それは、いつもお世話になっている南相馬市の人たちに恩返しをすることだった。今野畜産の女将さんはこう言う。
「まずはできることをやってみよう。不安はいっぱいあるが、食べることで、地域の復興につなげたいと思った」。

2011年4月半ばの緊急避難準備区域に変更になったことを期に震災直後のお店再開の判断を迫られた。南相馬を離れる住民は少なくなかったが、再開の決断に迷いはなかった。地域に支え られてきた店が、住民に再開を願われている時に再開しないわけにはいかない。そんな想いに後押しされた。 6年生の子どもたちは取材前に、目を輝かせながら「うちの近くにあるお店でメンチカツが本当においしくって人がいっぱい並ぶんだよ!本当は今野畜産っていうんだけど、みんなこんちくって呼ぶの。」と動画制作前に教えてくれた。
これは今野畜産が地域に根付いている純然たる証だった。これほど愛されている「こんちく」をどう映像で表現したらいいのか。子どもたちの熱い気持ちに応えられるのか。簡単ではない。 私達の班では子どもの想いを最大限伝えるべく生の姿に近くなるよう心がけ撮影を開始した。おいしそうにメンチカツをほおばるシーンはもちろんのこと、たどたどしくも女将にたくさんの質問していく小学生の姿を記録に残すことができた。その姿をみて、女将の目指す地域復興、すなわち食べることで地域の子供の成長を後押ししていることを実感させられた。 取材を通じて私は地域貢献型の精神と、それを受け取る形で地元民が語る姿に感銘した。今野畜産には今後とも地域に根付くスタイルを貫いてほしいと思う。